大玉村のワインを全国に!ブドウ栽培を手がける移住者の毛利さん


美しい四季を感じながら暮らせる大玉村
大玉村は、日本百名山の一つに数えられる安達太良山の裾野に位置する自然豊かで小さな村です。雄大な山々とのどかな田園風景が広がり、四季の移ろいを間近で感じることができます。車で郡山市まで約30分、福島市まで約40分と都市部へのアクセスが良く、ベッドタウンとして発展しています。
長期にわたって人口が増加しているうえ、ここ数年、子どもの割合は県内トップ。また早くから村への移住・定住促進に注力し、移住支援金や空き家バンクなどさまざまな支援制度を用意。県外からの移住者は年々増加しています。
ここでは、2012年から大玉村と神奈川県との二拠点生活を開始し、ワイン用のブドウ栽培を行う毛利良之さんへのインタビューをご紹介。移住のきっかけや暮らしてみての感想、村の好きなところなどを伺いました。─移住のきっかけを教えてください。
私は東京生まれで、長年にわたりテレビ業界で働いていました。
妻が大玉村出身なので、以前から自宅がある横浜と福島を行き来していました。
2011年の東日本大震災が起こる前に、東京リタイア後は「安達太良山を眺められる家に住みたい」という妻の夢を実現するため、土地の手当てもしていました。
大震災後は、放射線の心配のなか、一時は移住の可否を検討する時期もあったのですが、結果的には、妻の兄弟の多くが住む大玉村でゆっくり過ごすのも良いのではということになり、震災の翌年家を建てました。─ワイン用のブドウ栽培を始めた経緯を教えてください。
もともと土いじりも好きで、大玉村に住み始めた当初から親戚から借りた畑でじゃがいもや大豆・とうもろこしなどを作っていました。
とても楽しかったのですが、野菜は1年間で完結する作物のため、「未来につながらない」と感じるようになったのです。次第に、「数十年後も継続的に楽しめる作物を育ててみたい」という想いが芽生え、辿り着いたのがワイン用のブドウでした。私自身がワイン好きだったことも背景にあります。
2015年にテストケースとして欧州種3種と甲州を3本ずつ、計12本の苗木を植えて様子をみました。幸いなことにすべて順調に育ったので、翌年にはメルローを100本、甲州を50本、2018年にはカベルネソービニヨンを100本追加しました。─ブドウ栽培ではどんなところが大変ですか?
通常、ブドウの実は苗を植えた3年目以降に実がなります。ブドウ栽培教室に通って基礎を学んだものの、3年目に収穫できたのはわずか20kg。質も悪く、非常に残念でした。
また高温多雨の日本の気候風土では、病気が発生しやすいのも特徴です。4年目には多数の実がなったのですが、異例の長梅雨により、病気が出てほぼ全滅しました。自然と密接に関わる農業の厳しさに心が折れ、一時はやめてしまおうかとも考えたほどです。そんな中、なんとか踏ん張ってもう1年挑戦したところ、2021年には400kgの実を収穫することができました。
醸造は長野県のワイナリーに委託しており、2021年に収穫したブドウから、赤白合わせて300本のワインが出来上がりました。「メルロー」は華やかな香りとしっかりした渋みがある赤ワインに、「甲州」は甘味と酸味のバランスに優れた白ワインに仕上がりました。
ワインの名称は「OOTAMA BLUE」と名付けました。高村光太郎の「智恵子抄」に登場する、安達太良山にまつわる有名なフレーズの青い空を意識しています。ボトルのラベルも安達太良山をモチーフにデザインしました。
数限りない失敗の連続でしたが、今後は栽培技術を磨いて収穫量を増やし、1,000本のワインを作ることを目標としています。─大玉村に暮らしてみての感想を教えてください。
二拠点生活をスタートさせた当初は、多くの場面で都会と田舎のギャップを感じました。映画館がない、好きな町中華がない、ふらっと入って時間を潰せる図書館もない。まさにないないづくし。しかも常に車での移動が基本。
一方、大玉村で過ごす真夏の世の快適さは、格別です。蒸し蒸しする寝苦しい都会の夜とは好対照。野菜も安くて美味しい!富士山だったらもっといいのになあと思いながら見る安達太良山の美しい眺めも気に入っています。そうした都会と田舎のメリットデメリットを感じることができたのも、貴重な体験です。─移住を検討されている方へメッセージをお願いします。
移住を考え始めたら、まずは「移住の目的」を明確にすることが大切だと思います。移住後の暮らしや、仕事、住む場所をしっかり考えずに移住してしまうと、後悔してしまう可能性もあるかもしれません。また、移住者ネットワークを活用したり、地域のキーパーソンを探したりすることもおすすめです。
田舎での暮らしは厳しい側面もありますが、得られることもたくさんあります。大玉村は国道4号と東北自動車道が縦断しており、都会からのアクセスがよいのも魅力です。ぜひ移住先としてご検討ください。