「万葉集」にも詠まれた百名山!登山者数東北エリア4年連続1位の「安達太良山」

  • 日本百名山の一つに数えられる、安達太良連峰の主峰

    大玉村や二本松市、郡山市、猪苗代町にまたがる標高1,700mの「安達太良山」。那須火山帯に属し、鬼面山、箕輪山、鉄山、和尚山など東西約9kmにわたって連なる成層火山群の主峰で、日本百名山の一つに数えられています。頂上の岩石が乳首のように盛り上がっている形から、別名で「乳首山(ちちくびやま)」とも呼ばれています。

    古くから人々に親しまれてきた名山で、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された日本最古の歌集「万葉集」では、約4,500首のうち安達太良山を詠んだ和歌は3首登場。明治・大正時代を代表する詩人・彫刻家、高村光太郎の詩集「智恵子抄」では、安達太良山の美しい風景が描写されています。

    昔から人々の心を惹きつけてきた安達太良山ですが、時代を超えてもその人気ぶりは健在。二本松市にあるロープウェイを利用すれば約1時間半で山頂にたどり着けるため、登山初心者やファミリーでも気軽に楽しめる登山スポットとして支持されています。
    山頂から360度に広がるパノラマビューは実にダイナミック。緑豊かな樹林帯や滝が流れる渓谷、荒々しい山肌など変化に富んだ景観も魅力です。
    さらに東北屈指の紅葉の名所としても名を馳せ、毎年見頃になると多くの観光客やカメラマンで賑わいます。
    アウトドア事業を行う株式会社ヤマップが公開した、「2024年に『登られた山』ランキング」における東北エリアでは、安達太良山が4年連続で1位を獲得しました。

  • 高村光太郎の妻・智恵子が愛した “ほんとの空”を一望

    多彩な風景美に出合うことができる安達太良山。山麓駅と山頂駅を結ぶ「あだたら山ロープウェイ」では、眼下に広がる街並みや、安達太良連峰、蔵王連峰などを眺める約10分間の空中散歩を楽しめます。

    山頂駅の近くにある「薬師岳パノラマパーク」では、標高1,350mの薬師岳や安達太良山連峰を一望できます。毎年9月下旬から10月下旬には、山肌が鮮やかな赤や黄に染まり、訪れる人々を魅了してやみません。
    薬師岳パノラマパークの一角には、高村光太郎の「智恵子抄」に登場する“阿多多羅山(あだたらやま)の山の上に 毎日出ている青い空が 智恵子のほんとの空”という一節にちなんだ記念碑があります。同作を読んだことがある人にとっては、心踊るスポットといえるでしょう。

  • 源泉掛け流し温泉付きの山小屋も!多様な温泉地を形成

    日本に86ある活火山の一つであり、気象庁が火山活動を24時間体制で監視する常時観測火山にも指定されている安達太良山。そのため火山性の温泉が多量に湧出し、麓にはいくつもの温泉地が点在しています。
    多くの登山客に親しまれているのが、登山コースの途中にある「くろがね小屋」。1949年(昭和24年)に創業した源泉掛け流し温泉付きの山小屋で、筋肉痛や疲労回復に効果があるとされる硫黄泉を楽しむことができます。軒先に吊るされた年季の入った「黒い鐘」がシンボルです。

    小屋内は木のぬくもりに溢れ、どこか懐かしい雰囲気。寒さが厳しい冬にはダルマストーブが登山客を温かく迎えます。夕食では20年前に考案された秘伝レシピによるカレーを提供。お肉や野菜がゴロゴロ入ったカレーは食べ応え抜群なうえ、おかわり自由。このカレーを目当てに小屋泊を楽しむリピーターも少なくありません。

    ※くろがね小屋は老朽化による建替え工事のため営業休止中です。工事スケジュールの延長が見込まれ、当初完成予定の2025年度から3年程度遅れる見通しとなっています。建替え工事・再開時期については、福島県観光交流課にお問い合わせください。
    福島県観光交流局 観光交流課(福島県庁西庁舎11階)
    電話:024-521-7286 (平日8:30~17:00)

  • マイナスイオンたっぷりの森林浴が堪能できる「あだたら渓谷自然遊歩道」

    安達太良山から流れる原瀬川の上流、通称「烏川」沿いには全長1kmほどの「あだたら渓谷自然遊歩道」が整備。標高約950~1,000mにある遊歩道で、変化に富んだ渓谷美を眺めながら散策することができます。ヒバなどの自然林に包まれ、空気のおいしさもまた格別です。
    春にはレンゲツツジやイワカガミ、夏にはシャクナゲ、秋には黄金色の紅葉、冬には静寂の銀世界など、四季折々に異なる表情を楽しめるのも魅力。
    ゆっくり歩いても1時間半あれば散策できるので、本格的な登山をせずとも、安達太良山の雄大な自然を気軽に体感できるのもポイントです。

    遊歩道沿いには複数の滝があり、進むにつれ迫力ある景色が次々と現れます。最大の見どころは、奥岳登山口からすぐの場所にある落差15~20mの「魚止滝」。“魚が登りきれないほどの滝”という名前の由来通り、水が勢いよく流れ落ちるさまは圧巻のひと言です。晴れていれば、エメラルドグリーンに煌めく滝つぼを見ることができます。

  • まるで月世界!大噴火によって形成された「沼ノ平火口」

    活火山であるがゆえ、安達太良山は噴火や火山ガス、山崩れなど過去にさまざまな災害を引き起こしてきました。1900年(明治33年)には、標高1,300m付近にある沼ノ平で大規模な噴火が発生。これにより火口近くにあった硫黄精錬所が壊滅し、当時所内にいた作業員72人が犠牲となりました。

    「沼ノ平火口」はこの大爆発によって形成された長径約300m、深さ約30mの巨大な火口で、馬ノ背・牛ノ背と呼ばれる稜線から眺めることができます。白い岩盤がむき出しになった荒々しい山肌はクレーターさながら。まるでどこかの惑星に降り立ったような不思議な感覚を覚えることでしょう。